現在「安全」の定義として広く用いられているものに、「許容できないリスクがないこと」があります。
事故を避けるのに必要な対策を取ったうえで、0にならないリスクと得られるベネフィットとのバランスをとりながら成長を続けていくことが重要です。また、0にすることはできないリスクを「許容できるかどうか」は、その人の価値観や状況によって異なります。リスクに対する姿勢が違う人同士が協調し、コミュニケーションをとりながら課題解決を行っていくことが成熟した社会に必要だと考えています。
安全工学は人の身体や命,財産や価値を事故から守る学問として、産業技術の発展とともに進化を続けてきました。私は化学物質による爆発・火災の発生メカニズムの解明や被害の防止・局限化のための技術開発を行っているほか、リスクマネジメントの手法の開発にも取り組んでいます。現金でのちょっとした支払いの時に、お釣りの小銭の枚数が少なくなるようにちょっと暗算するように、何かを始めるときに安全工学の知識をちょっと使って事故に遭遇する機会や被害を減らすことができるような、安全工学を身近に感じられる社会を目指しています。
熊﨑 美枝子
Mieko Kumasaki